刺繍データの一筆書きが怖くなくなる!プロがやってるマニュアルパンチの考え方

刺繍データ 一筆書き

山本凌哉

こんにちは!糸の帆(itonoho)の山本です。

前回の記事では、Wilcom ESの「ブランチング」機能を使って、刺繍データの糸切りを簡単に減らす方法をご紹介しました。ブランチングは非常に便利な機能で、初心者の方でも簡単に一筆書きの刺繍データを作ることができます。

ただし、刺繍データ作成を仕事として行う現場では、正直あまりブランチングが使われることはありません。というのも、自動機能に任せた縫い順が必ずしも最適になるとは限らないからです。

例えば今回使ったデータでいうと、ブランチングしたデータは手動でつないだデータと比べて5,000針ほど針数が多くなってしまいました。つまり無駄なステッチが多く、仮に500rpmで刺繍すると単純計算で縫い上がりに10分の差が出るというわけです。6回刺繍したらそれだけで1時間の差が生まれます。

また、縫い順がいろんなところを行ったり来たりするため、生地・デザインによっては柄ズレの原因になることもあります。

そう聞くと、「結局、最初から手動で一筆書きを作らないといけないのか…」と思う方もいるかもしれません。

しかし、実際はそういうわけでもありません。

そこで今回は、刺繍データ作成の現場でもよく使われている「マニュアルパンチによる一筆書きの考え方」についてご紹介していきます。

刺繍データの「一筆書き」が難しい…

刺繍データ 一筆書き

刺繍データの一筆書きって、難しいと思いませんか?正直かなり面倒ですよね。

簡単なデザインならともかく、少し複雑になると頭がパンクして嫌になってしまう方も多いのではないでしょうか。刺繍データ作成において、初心者さんがつまずきやすいポイントのひとつです。

実は基礎だけでやろうとすると誰がやっても大変

しかしこの問題、実は経験不足だけが原因ではありません。上手なやり方を知らないだけです。

一般的に刺繍ソフトの基礎講習では、マニュアルパンチで縫い順通りに作る」というやり方を教わることが多いかと思います。ランニングステッチで、各パーツを繋ぎながら作成していくやり方ですね。

よくある基本的な手順
  1. オブジェクトを作る
  2. 次の縫い始めまでランニングステッチで歩く
  3. 次のオブジェクトを作る (以降2→3の繰り返し)

確かにこの方法は「マニュアルパンチの基本」として欠かせない考え方です。単純なデザインならこれで問題ありません。

しかし、このやり方だけで複雑なデザインを作ろうとすると、実は誰がやっても大変なんです。あなたにセンスが無いわけではないのでご安心ください。

一筆書きの基礎だけ習った段階では、いざ複雑なデザインになると

  • 頭の中で縫い順がイメージできず、なかなか手を動かせない
  • ルートをミスして途中で行き止まりになってしまう
  • 一度行き止まると、最初または途中まで戻って作り直さないとどうにもならない
  • 縫い順や重なり順など、自分でも構造が把握できなくなる

といった問題に悩まされます。ここで挫折してしまう人も多いです。

実際の現場で使われる一筆書きの手順

ではどうすれば良いのか。答えは簡単で、その先のステップを身に付けることです。

多くの人は、基本的な一筆書きの知識だけを習って「マニュアルパンチってそういうものなんだ」という固定観念のもと、ずっと大変な作り方を続けてしまっています。これは10年以上刺繍の仕事をしている方でも、決して珍しい話ではありません。

実際データ作りに精通しているしている方は、必ずしも縫い順通りに作り始めるとは限りません。最初に完璧な縫い順を設計しているわけでもありません

むしろ、まず表面の形だけを作ってしまい、あとから縫い順を整理するという手順で作るケースが多々あります。

例えば、

  1. まずは一通り表面の形だけ作る
  2. 縫い順を並び替える
  3. 必要に応じてランニングステッチなどで接続する

といった流れです。

現代の刺繍ソフトでは、最初から完璧な縫い順を考える必要はありません。あとから自由自在に縫い順を整理して、一筆書きに再構成することができるようになっています。

複雑なデザインにおいては、この手順の方が無駄がなく、なにより頭を悩ませることがなくなります。

一筆書きが得意な人の考え方

刺繍データ作成が得意な人は、とりあえず手を動かしながら、臨機応変に縫い順やつなぎ方を整理していくテクニックに長けています。どちらかというとデータ作成前半では、「あとから整理しやすい状態にしておく」という考え方を持つことが重要です。

例えば、最初の形取りの段階では、あえて一筆書きにしておかない(つなぎのランニングステッチを入れない)方が、あとあと整理しやすくなります。完成がはっきりイメージできるデザインは別として、まだ不確定な段階で無理につなぐことはありません。

最初の段階で縫い順のイメージが難しい場合は、

  • 最終的な縫い順は、形取りが終わったあとで考える
  • つなぎのランニングステッチは、必要に応じてあとから挿入する

という手法もある、ということを知っていただけたらと思います。

「縫い順」や「つなぎ方」をあとから整理できることが重要

そしてこのような作り方をするためには、あとからデータを自由自在に組み替えられることが前提になります。

つまり、

  • 縫い順を並び替える
  • オブジェクトを整理する
  • ランニングステッチで接続する など

といった作業を、あとから自在に行える必要があります。

そのためには、刺繍ソフトの正しい使い方を知ることが重要です。

例えばこちらの刺繍データ。あなたはサクサクと一筆書きに再構成することができるでしょうか。

刺繍データ 糸切り

縫い順バラバラで糸切りだらけのデータを見たときに、「ここまで形が出来ていればあとは整理するだけ!」と思える方は、ある程度のスキルが身についているといえるでしょう。

逆に「これ縫い順どうなってるの…」「縫い順リストを見ながら…」という方は、まだ理解が足りていない可能性があります。

一筆書きはセンスではない

一筆書きというと、「センスが必要」「経験がないと難しい」と思われがちですが、実際にはそうではありません。

もちろん一定の知識は必要ですが、数か月~1年くらいやっていても苦手意識がある場合は、一筆書きの考え方やソフトの使い方に問題がある可能性が高いです。今回ご紹介した考え方を理解すると、どんなに複雑なデザインでも落ち着いて作れるようになります。

糸の帆では、対面・リモートでの刺繍ソフト講習も行っていますので、

  • 一筆書きが苦手
  • 縫い順設計を理解したい
  • 刺繍データ作成をレベルアップしたい

という方は、お気軽にご相談ください。

まず形を作ってから、あとで縫い順を整えていく。この考え方を知るだけでも、刺繍データ作りはグッと楽しくなります。

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