こんにちは!糸の帆(itonoho)のやまもとです。
今回は3Dフォームに関する実験をやってみたので共有させていただきます。
よく3D刺繍に関するお問い合わせをいただくのですが、その中でも多いのが「3Dフォームが綺麗にちぎれない」というご相談です。
原因は主に2つ。「刺繍データの作り方」と「フォームの選び方」の問題です。
前者については、これまでにも3D刺繍用のパンチングについて触れてきましたが、ノウハウが必要です。こちらは個別講習も行っておりますのでお気軽にお声がけください。
後者については、同じ刺繍データでも、使っている3Dフォームの違いでちぎれやすさやカスの残り方が大きく変わります。今回は一例を挙げてご紹介しますのでぜひご参考ください。
三和化工株式会社の3Dフォーム「サンペルカ」
3Dフォームに関してはこれまでにも色々なメーカーの商品を使ってきましたが、今回は試験成績が公開されている「サンペルカ」を使って比較実験をしてみたいと思います。
サンペルカは三和化工株式会社が開発した独立気泡のポリエチレンフォーム。軽量で柔軟な素材としてランドセルや通箱の緩衝材などに用いられています。
工作用としての使い勝手の良さから、一部の手芸店では見かけることもありますが、3D刺繍用の資材としては、まだそこまで認知がないのではないでしょうか。
カラーバリエーションが豊富で厚みも1ミリ単位でオーダーできるなど、カスタマイズ性の高さも魅力。比較的お値打ちにネット購入できますので、興味がある方はぜひ一度お試しください。
3Dフォームのちぎれやすさを実験
サンペルカは標準生産(受注生産を除く)だけでも30以上ものラインナップがあります。今回はその中でもカラーバリエーションが多いものから選定しました。
用意したのは「L-1400」と「L-2500」の2タイプ。カラーはいずれも7種類(白・灰・黒・青・赤・黄・緑)の中から選ぶことが出来ます。
3D刺繍は基本的に厚くなるほどちぎれにくくなるのですが、密度の違うタイプがどう影響してくるのか楽しみです。
両者の試験成績を表にまとめてみました。
「見掛け密度」「引張強さ」「伸び」辺りの数値に注目してみると分かりやすいんじゃないでしょうか。
実際に触ってみると一目瞭然なのですが、簡単に言うとL-1400が密度が高く硬い質感、L-2500が密度が低く柔らかい質感ということになります。果たしてどんな違いが出るでしょう。
L-1400
まずはサンペルカL-1400の3ミリ厚。
触った感触としては私もよく利用しているオゼキさんの3Dウレタンフォームに似ています。強いて言えばそれよりも若干柔らかめな印象。
案の定ちぎる際の感触も、カスの残り方もほぼ同じという結果になりました。このあたりが3D刺繍に使われる素材の標準なのかなぁと思います。
L-2500
続いてサンペルカL-2500の3ミリ厚。
先ほどのL-1400と比較すると、刺繍が沈み込んでこの時点でちぎれかけているのが見て分かるかと思います。
言うまでもなくちぎれやすさ抜群でした。小さい隙間もピンセットを使わなくても指でポロっと簡単に取れてしまうほど。さらに言うとカスもほとんど残らず、これなら後処理も不要なレベルです。
実験結果
ちぎれやさという観点で選ぶなら、見掛け密度の低いものが有効だという結果になりました。試験成績からもおおよそ想像はつきますが、3D刺繍においてもはっきりと違いが確認できたのは良かったです。
とくに3mm厚になると商品によって明らかに差がでてきますからね…。3Dフォームの処理にお悩みの方は参考にしていただけたらと思います。
また、今回は「ちぎれやすさ」という処理面に注目して実験しましたが、実際は仕上がり面にも違いが現れるので注意が必要です。
単純に触った時の硬さはもちろんのこと、見た目でいうと刺繍の角の立ち方が変わってきます。見掛け密度の高いフォームは糸に押し負けず角が立ち、見掛け密度の低いフォームは糸に押されて角が丸くなるイメージです。
- 角を出したい or 丸みを出したい
- 硬くしたい or 柔らかくしたい
- ちぎれやすさを重視したい
- カラーバリエーション重視したい
- コストを重視したい
この辺りはどれがベストというよりは、各自の好みやデザインとの兼ね合いを見ながら使い分けるのが良さそうですね。
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