こんにちは!糸の帆(itonoho)のやまもとです。
ミシン刺繍に使われる代表的な糸「ポリエステル糸」と「レーヨン糸」の特徴や使い分けについてまとめました。
使用しているミシンの種類や、作るものによっても適性が変わってきますので参考にしてみてください。
ポリエステル糸とレーヨン糸の特徴
まず初めに、ポリエステルとレーヨンはどちらも化学繊維ですが、細かくいうとポリエステルは合成繊維、レーヨンは再生繊維に分類されます。
それぞれ特徴はありますが、今回は刺繍糸としての特徴のみを見ていきましょう。
特徴 | ポリエステル | レーヨン |
強度(切れにくさ) | ◎ | ○ |
しなやかさ | △ | ○ |
耐熱性(ヒートカット可能かどうか) | × | ○ |
光沢 | ○ | ◎ |
家庭用刺繍ミシンでの糸調子 | ○ | △ |
工業用刺繍機での糸調子 | ◎ | ◎ |
生地のしわになりにくさ | △ | ○ |
こちらの表をもとに、使い分けのポイントを5つ紹介します。
1、強度があるのはポリエステル糸
強度が強いのはポリエステルです。
一般的にアパレル関係はレーヨン、スポーツ業界はポリエステルがよく使われていると聞きますが、これも糸の強度が関係しています。
実際比べてみると分かりますが、刺繍機でレーヨン糸を使っていると確かに切れやすいです。
一方、ポリエステル糸は丈夫で切れにくいですが、針が折れやすくなるというデメリットもあったり…。そういう意味では、レーヨンは刺繍機に優しいと言えるかもしれません。
ポリエステルはそれほど強いので、摩擦の多いユニフォームなどにも多く使われています。
とはいえ、いずれも天然繊維の綿や絹に比べれば強度はあります。レーヨンで刺繍したアイテムでも、洗濯を繰り返すくらいで切れることはありません。
あくまでより強度を重視したい時にポリエステルを使うイメージですね。
2、ヒートカットするならレーヨン糸
耐熱性ではレーヨンに軍配があがります。
例えばワッペン作りでヒートカットしたい時。ポリエステル糸は熱で溶けてしまうので使えません。
その為、ワッペンの周りには上糸としてレーヨン糸を、下糸としてカタン糸を使うことが多いです。
3、光沢はレーヨンの方がやや強い
光沢はレーヨンの方がやや強いです。
ちなみに糸の光沢は「短繊維」か「長繊維」かによって差がでます。
天然素材では短繊維の「綿」に比べ、長繊維の「絹」の方が光沢はありますよね。
絹は蚕の繭から作られた一本の長い糸なので、綿のような細かな毛羽がありません。光沢がでる理由はそこにあります。
一方、化学繊維であるポリエステルやレーヨンは、短繊維にも長繊維にも加工することが可能。
一般にレーヨンは人絹(じんけん)とも呼ばれますが、絹に似せて作られていることからも分かるように非常に光沢のある糸です。
ポリエステルは普通の縫製に使われるスパン(短繊維)が有名ですが、長繊維に加工することで光沢が出ます。ポリエステルフィラメント糸と呼ばれるものです。
刺繍糸の場合は、いずれも光沢のある糸になっていますが、見比べるとレーヨンの方がナチュラルな輝きといった印象です。
4、糸調子のとりやすさ
糸調子の取りやすさは使っている刺繍ミシンも関係してきます。
「家庭用刺繍ミシン」と「工業用刺繍機」では違いがあるので要注意ポイントです。
家庭用刺繍ミシンの場合
家庭用ミシンは多くの場合、最もメジャーなスパン糸に合わせて設計されています。
スパン糸は昔からある綿糸に似せてポリエステルで作られたものですが、綿に比べて強度があり非常に使い勝手が良いです。
そもそも縫製の目的は2枚の生地をしっかりと縫い留めることなので、丈夫な糸で強く縫い締めることが理想。家庭用の刺繍ミシンはこうした縫製ミシンの延長線上にあるので基本設計は同じです。
つまり家庭用刺繍ミシンは、通常の縫製ミシン同様にポリエステル糸の方が糸調子が取りやすく設計されています。
工業用刺繍機の場合
刺繍の目的は、生地を縫い留めることではなく装飾です。ですから柔らかい生地や伸びる素材などにも優しく糸を載せる必要があります。
工業用刺繍機はこうしたことを前提に設計されているため、レーヨンのような弱い糸でもバランスよく縫い締まるようになっています。
垂直釜により、下糸の調整も可能ですので、基本どんな糸でも糸調子が取りやすいです。
5、シワになりにくいのはレーヨン
刺繍はステッチした時にできる生地の「シワ」や「ヨレ」に悩まれることも多いです。
シワは部分的な縫い縮みが主な要因。これは接着芯(下紙)などによってもある程度回避できますが、「ステッチの幅」「スピード」「圧力」なども影響してきます。
ちなみに糸には弾性があり、その特性により切れにくくなるメリットはあるのですが、反面時間の経過とともにもとに元に戻ろうとします。特にミシンの張力を強くした場合は、強く引っ張った分だけ反動も強く表れます。
縫製用語ではこれをパッカリングと呼びますが、これもシワになる要因のひとつです。
レーヨンの場合は、糸特有のしなやかさに加え、糸調子を弱く設定して刺繍が出来ますので、シワになりにくい傾向があります。また柔軟性もあるため糸のループが起こりにくいともいわれています。
以上、ポリエステル刺繍糸とレーヨン刺繍糸の比較でした。
尚、ポリエステルの方がコストの関係でいくらか安く購入できます。それぞれの特徴も含め選んでください。
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