こんにちは!糸の帆(itonoho)のやまもとです。
通常の縫製と同じように、刺繍にも「適した生地」と「適さない生地」があることをご存知でしょうか?
ここではそんなミシン刺繍に適した生地について解説します。
「手刺繍」と「ミシン刺繍」の生地選びの違い
手刺繍とミシン刺繍、いずれも基本的には生地を刺繍枠にはめた状態で行われます。その際、生地が太鼓の皮のようにピーンと張った状態であるほど刺繍はしやすくなります。
(ただ強く引っ張れば良いわけではないので詳細は刺繍枠の使い方を参照ください)
置き縫いなど例外もありますが、いずれにせよ生地が張った状態であるに越したことはありません。つまり、ある程度の張りがあり密度の細かい生地が刺繍しやすい生地ということになります。
ちなみに、ミシン刺繍は手刺繍と違って生地にトレースする必要はありません。生地に線を引くのは意外と難しいのですよね…。素材選びの際に転写のことまで考えなくても良いのはありがたいです。
一方、ミシン刺繍は手刺繍に比べ「ステッチの力加減」を調整するのが難しく、生地がよれたりシワになりやすい傾向にあります。機械に手のような繊細な加減は出来ませんからね。
少しでも伸び縮みの少ない強い生地を選ぶことが綺麗に仕上げるコツです。
ミシン刺繍に適した生地(布)と適さない生地
ひとことで生地と言っても無数に存在します。
刺繍に使われる生地はいろいろありますが、まずは大まかに分類すると特徴が掴みやすいです。
1、布帛(織物)
布帛(ふはく)という言葉には馴染みがないかも知れませんが、一般的に「布」と呼ばれるもので織物になります。要はタテ糸とヨコ糸で織ってある生地です。
糸の素材が変われば、風合いも伸び方も変わってきますし、太さが変われば厚さや張りにも違いが出ます。
織り方は一般的な平織以外にも、糸を飛ばして織る綾織りや朱子織があります。同じ平織の中でも無数の種類があり、刺繍のやりやすさにも違いが出ます。
比較的やりにくい生地
「ダブルガーゼ」や「綿ローン」など、柔らかさを特徴としている生地は比較的難しいです。天然繊維の「リネン」なども同様。
柔らかいというのは地の目が動きやすいという事。糸がタテヨコ真っすぐになっていない生地は全体的に難易度が高くなります。
光沢を特徴とした「サテン(朱子織)」もドレープ感があって難しい生地です。
比較的やりやすい生地
一方、「ツイル」や「デニム」などは柔らかさを特徴とした綾織り生地ですが、こちらは糸も太く、地の目も安定しているため刺繍はしやすいです。
「シーチング」はゆったりと織っていますが、地の目が真っすぐなのでやりやすいです。似たような生地にやや細い糸を使った「ブロード」がありますが、こちらの方が密に織ってあるので細かな表現が出来る場合もあります。
中厚生地としては、引き揃えの平織な「オックス」も厚みや張りがある分刺繍はしやすいです。
また張りと言って想像する代表生地は「帆布(はんぷ)」ですね。こちらも刺繍はしやすいです。ただ号数によっては複数糸を撚っているので、細かな再現が難しくなります。
「キルト」も比較的刺繍はしやすい生地です。キルトは表面がオックス、ブロード、ツイルなどの普通地で中に化繊綿を挟んだもの。このように厚みのあり伸びない生地は刺繍がしやすいです。
2、ニット(編物)
上記が織物とすればこちらは編物。カットソーと呼ばれる物もこの仲間で、毛糸で編んだセーターや市販されているTシャツ等が当てはまります。
ニットの特徴は、何と言っても良く伸びることです。これらも素材や編み方によりさまざまな種類の名前で呼ばれていますが、どれも一様に刺繍の難易度は高いです。
一面に刺繍されたTシャツってあまり見かけませんよね。刺繍したところは伸びなくなるので当然使い勝手も悪くなりますし、加えて難しさもあります。ワンポイント的な刺繍が無難でしょう。
3、不織布
不織布(ふしょくふ)という言葉も馴染みは少ないかも知れません。マスクのニュースで始めて耳にした方も多いんじゃないでしょうか。
不織布は繊維を絡ませて作ったもので、使い捨てマスクや使い捨てエプロンなどに使用されます。
刺繍でよく使う「フェルト」もこの仲間。
縦・横・斜め、どの方向にも伸びにくく刺繍しやすい生地です。特にポリエステル100%素材はヒートカットも出来るため、ワッペンなどにも好んで使われます。
フエルト独特の細かな繊維は、風合いとして好まれるケースもありますし、時には細かな表現が出来ないということで避けられることもあるでしょう。
以上、思いつくままに例を挙げてみました。
実際は接着芯などの補助材と組み合わせて使用するため、必ずしも上記のように向き不向きが決まるわけではありません。刺繍データの作り方も関係してくるので、実際に刺繍しながらいろいろな生地を試してみると良いでしょう。
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