こんにちは!糸の帆(itonoho)のやまもとです。
刺繍ミシン・刺繍機において針の役割は非常に重要です。
「針を変えたら上手くいった」というケースや、逆に「針を変えたら縫えなくなった」という話はよく聞きます。使用する糸の太さによって交換するのはもちろん、場合によっては生地の種類や厚さに合わせて変えるなんてことも…。
ここではそんな刺繍ミシン針の種類と選び方をご紹介します。
刺繍ミシン針の種類について
刺繍ミシン・刺繍機にはもともと針が付属しています。マニュアルにも推奨針が記載されているので、基本的にはその通りに選んでおけばOKです。
とはいえ、針を変えることで不具合が解消されることもよくある話。ある程度の種類や特徴は把握しておきたいですよね。いざという時に役立ちます。
家庭用針(HA)と工業用針(DB)の2種類
まず大前提として、ミシン針は「家庭用針(HA)」と「工業用針(DB)」の2種類に分けられます。糸は家庭用と工業用で汎用出来ますが、針は形状が違い互換性がないので注意しましょう。
大まかな区分は下記の通りです。(詳細はマニュアルをご確認ください)
針メーカーと刺繍機の互換性について
ミシン針にも複数のメーカーが存在します。
日本では「オルガン」がメジャーですが、ベルニナやハスクバーナではドイツの「シュメッツ」を純正採用するケースが多いです。工業用では「グロッツ・ベッケルト」も有名ですね。
基本的に互換はあると認識していますが、自動糸通しなどの関係で注意を促しているケースもあるのでご注意ください。特に家庭用では指定メーカを使うのが無難かもしれません。
針番手と糸の太さの関係性
糸番手(デニール) | 針番手(日本) | 針番手(ドイツ) |
75d/2(細糸) | #9~10 | #65~70 |
120d/2(標準糸) | #10~11 | #70~75 |
200d/2(太糸) | #11~14 | #75~90 |
針の番手にもいくつか種類があります。刺繍でよく使われるものをピックアップしました。
針番手と糸の太さの組み合わせが正しくないと「糸切れ」「目飛び」「縫い上がり不良」の原因になりますので、最低限頭に入れておきたい項目ですね。
ちなみにパッカリングを抑えたい時は番手を下げるのも効果的だったり…。同じ糸でも針番手の違いだけで刺繍の仕上がりが大きく変わるケースがあります。
「家庭用ミシン針」と「工業用ミシン針」の特徴
ここからは「家庭用ミシン針」と「工業用ミシン針」ごとに、より詳しい特徴を見ていきたいと思います。いくつか具体例もあわせてご紹介します。
家庭用刺繍ミシン針
家庭用刺繍ミシンユーザーの場合は、多くがポリエステルの推奨刺繍糸を使っていることと思います。そうなると糸の太さも限られてきますので、そんなに針を変更することも無いかも知れません。
使用できる針は縫製用と同じく「HA×1」が基本です。
刺繍ミシンは生地が360°全方向に動くため、針にかかるストレスも縫製ミシンとは異なります。その為目飛びや糸切れしにくい形状の専用針が用意されているのです。具体的にはより繊細な糸でも切れたり解れたりしないように、穴の大きさや形状が工夫されていたりします。
私の例で言えば、ブラザーの刺繍ミシンでしたが刺繍専用針の「HA×1EB」をメインに使っていました。番手は細糸の時は#11、普通糸の時は生地厚も見ながら、#11か14で使い分ける感じ。ニットの時にはSPの方がしっくりくる場合もあります。
またブラザー職業用刺繍機ユーザーの方は、専用のHA×130EBBRを使用している方が多いでしょう。
こちらには同タイプのチタンコーティング仕様もあります。硬い生地を使う方や、良く折れて困っている方は試してみてください。
工業用刺繍ミシン針
工業用針の場合は、種類も豊富です。
刺繍糸も太さだけでなく、レーヨンやカタン糸を使ったり、レザーのような厚い素材に刺繍する場合もあるのでいろいろな針を試してみることをおすすめします。
刺繍ミシン針の交換時期について
刺繍ミシン針の交換時期についてまとめておきます。
コストの問題もあるのでどれが正解とは断言できないのですが、間違っても折れるまで使い続けて良いものではありません。
ミシンは複雑な構造をしていますが、最終的には針と回転釜の2つのパーツによって糸が通される仕組みです。何れも品質に影響する重要な役割を担う繊細な部品となります。
針の曲がりは出来栄えのみではなく、例えば釜に傷がついたり剣先がへたるなど、結果的に交換費用が嵩んでしまうケースに発展する恐れもあります。たとえ見た目は曲がっていなくても、摩耗するパーツなのでいずれも定期的に交換した方が良いでしょう。
ちなみに業務用刺繍ミシンになると交換時期をサポートしてくれる機能もあります。「この針だけエラーが多いので何か不具合が無いですか?」といった親切な警告です。家庭用刺繍ミシンは1本針しかないのでこういった比較は難しいですけどね…。
推奨する交換タイミングは、各々の使用条件にもよるので「10時間」や「1か月」など目安を記すのは難しいですが、刺繍の仕上がりにに異常を感じたらまず上糸と下糸を交換し、針も変えるというのがセオリーになります。
また、家庭用刺繍ミシンの場合は、購入時のテストサンプルを残しておくことを強くおすすめします。
ちなみにオルガンさんでは毎月8日をミシン針交換の日としていますので、最初のうちは一つの目安として見ると良いかもしれません。
針交換の注意点とおすすめアイテム
ちなみに蛇足かも知れませんが注意点をひとつ。
たまに「針を変えたら刺繍が出来なくなった」というケースがあるそうですが、ほとんどは針の付け方が逆なことが多いようです。工業用針の場合、「溝は手前、えぐりが後ろ側」が正解ですが、違いが判らない方も多いかも知れませんね。
えぐりは上糸と下糸を絡ませるためのループを作る大切な機能があります。つまり釜の方を向いていないと意味がありません。
針交換の際は、定位置まで入れてしっかりビスを止める。そして向きを間違えないように取り付けしましょう。
ちなみに針の向きを正確に測るためには「方向チェッカー」を使うのもおすすめです。
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