下縫いの目的と重要性!逆にしない方が良いケースもある?

Wilcom 自動下縫い 刺繍ソフト

山本凌哉

こんにちは!糸の帆(itonoho)のやまもとです。

刺繍データ作りにおいて「下縫い(下打ち)」は重要なポイントです。

刺繍の見栄えに直結しますので、その効果や目的を理解して正しく使いこなせるようになりましょう。

下縫いの目的は?

下縫いの目的は主に6つ。順番に見ていきましょう。

下縫いの目的
  1. 下紙(安定紙)と生地のズレを防止する
  2. 密度を高め、生地が透けるのを防ぐ
  3. 生地を安定させ、シワや縮み(パッカリング)を防ぐ
  4. ステッチが沈み込むのを防ぐ
  5. 毛羽のある生地を落ち着かせる
  6. 刺繍に立体感をつける

1、下紙(安定紙)と生地のズレを防止する

下紙(安定紙)には、生地にアイロン接着するタイプと、糊なしで生地と一緒に挟み込むだけのタイプがあります。しっかり固定してくれる接着タイプは良いのですが、糊なしの場合どうしても生地との隙間が生まれてしまいますよね。刺繍に悪影響を及ぼします。

初めに下縫いを入れることで、生地と下紙をつなぎとめて安定させることが可能です。ウレタンを使った3D刺繍も、最初にランニングでウレタンをざっくりと固定することがあったり…。

2、密度を高め、生地が透けるのを防ぐ

さらに下縫いには、刺繍の密度を高める効果もあります。初心者は上縫いのステッチ間隔を狭めることで密度を上げがちですが、実は下縫いを入れる方がはるかに効果的です。

どんな刺繍ソフトにも自動で下縫いを入れる機能があるので、上縫いの密度を上げる前に、まずは下縫いを調整してみることをおすすめします。

面積の大きな埋め縫いほど下縫いが重要になってきます。スカスカの刺繍は見栄えも悪いですよね…。

3、生地を安定させ、シワや縮み(パッカリング)を防ぐ

生地を安定させるのも下縫いの重要な役割。下紙を接着しない場合、粗い下縫いをしておくことで生地と下紙の遊びがなくなり、アイロン接着している場合にも縮み防止に役立ちます。

ステッチが集中するほど縫い縮みが発生しやすくなるので、それを避けるためにも下縫いは欠かせない存在といえるでしょう。

また後ほど紹介しますが、下縫いには「ランニング」や「ジグザグ」など複数の種類があるので、縫い縮み防止の目的なら角度もいろいろ試してみてください。

4、ステッチが沈み込むのを防ぐ

柔らかい生地を使うときは、下縫いをしておくことでステッチが沈み込むのを防ぐことも可能。

刺繍を立体的に見せる手法として、中にウレタンフォームを入れることがありますが、軽く立体感を出したい時は下縫いを重ねることも効果的です。

5、毛羽のある生地を落ち着かせる

下縫いには毛羽を落ち着かせる効果もあります。

タオルのようなループの大きい物には「水溶性シート」を重ねるのが効果的ですが、コーデュロイのような軽めの毛羽には下縫いである程度対応することが可能。

毛羽立ちが多い場合は長めのステッチを入れるのが効果的です。(通常は2.5mm程度のところを4mm以上にするなど)

6、刺繍に立体感をつける

刺繍に立体感をつけるのも下縫いの重要な役割です。

のっぺりして平坦な刺繍は安っぽく見えてしまいますが、ぷっくりと肉厚のある刺繍には高級感やかわいらしさを感じますよね。下縫いの入れ方で見た目の雰囲気も随分と変わるんです。

下縫いの種類

先ほど触れた通り、下縫いにはいくつか種類があります。

状況に応じて最適なステッチを選ぶのも重要です。

中心ランニング

中心ランニング

中心に行うランニングステッチ。

サテンの場合は2mm以内の場合などに使われる下縫いです。

幅の狭いコラム系オブジェクトに有効ですね。

ふちランニング

ふちランニング
エッジラン

オブジェクトの縁に打つランニングステッチ。

引っ張られるのをせき止めたり、埋め縫いの縁が生地目に沈み込むのを防ぐ効果もります。

ループのようにはみ出す場合はマージンの調整も重要です。

ジグザグ・ダブルジグザグ

ジグザグ・ダブルジグザグ
上:ジグザグ 下:ダブルジグザグ

ジグザグのステッチ。縫い縮みや、密度を高める効果があります。

単独または上記と組み合わせ、適度な立体感を演出したりもできます。

タタミ・ダブルタタミ

タタミ・ダブルタタミ
上:タタミ 下:ダブルタタミ

タタミのステッチ。引っ張られるのをせき止める効果があります。

複合埋め縫い系のオブジェクトなど、広範囲の埋め縫いに使われる下縫いです。

マニュアルで下縫いを作成するケースも

上記で紹介した下縫いは、ソフトに備わったいわゆる自動下縫いと呼ばれる機能です。

これだけでもかなりのデータに対応できますが、状況によっては自分でマニュアルの下縫いを入れるケースも多々あります。ランニングステッチや埋め縫いを利用することもあれば、マニュアルツールで完全に自作することもあったり…。

自動下縫いで対応できないケースは、自分で作ることも視野に入れてみてください。伸び縮みしやすい生地ではかなりの差が出るので、いくつかパターンを持っておくと対応力も付いてきます。

下縫いをしない方が良いケースも

最後に、下縫いをしない方が良いケースがあることにも触れておきます。

例えば小さな面積のデザイン。細かいデザインにおいては、下縫いを入れることで糸が密集して汚くなることがあります。狭い範囲で無駄なステッチが増えるとごちゃごちゃするので気を付けましょう。

例えば1cm以内の文字は、せいぜいランニングステッチ程度で十分。5mm以下なら下縫いを入れないのが無難です。

下縫いは刺繍データにおいて非常に重要な要素です。ぜひそれぞれの意味を理解した上で使いこなしていただけたらと思います。

コメント

  1. よっしー より:

    縫った文字の刺繍の横などから下縫いが少し出てきたりするのですが対策などありましたら教えていただきたいです。

    • 山本凌哉 山本凌哉 より:

      下縫いがはみ出す原因はいくつか挙げられます。
      それぞれ対策が異なりますので、実際の刺繍やデータを見てみないとなんとも言えませんね…。

      まずはデザインのサイズや形状に対して、適切な下縫いが選択できているかをご確認ください。
      下縫いのマージンを調整してあげることも重要です。